うつ病発見の手がかかりになるシンドローム・シフトとは?

うつ病の初期症状には精神的な症状だけでなく、身体的な症状が現れることもあります。

それらの症状を見逃すと、うつ病が重症化したり長引いたりする恐れがあります。早期に治療を開始することがうつ病においても重要とされていますが、そのためにはうつ病の初期に認める僅かな兆しを見逃さないことが大切です。

今回は、うつ病に関係があるといわれているシンドローム・シフトについて解説します。

 

シンドローム・シフトはうつ病の身体的症状のひとつ

うつ病を発症すると、気分が落ち込んでしまったりやる気がなくなったり、「精神的症状」が全面的に出ることが多いです。精神的症状のみがうつ病の症状だと思っている人がいますが、実は「身体的症状」もうつ病ではよく現れ、うつ病患者を悩ませるものです。

うつ病の初期の段階から身体的症状が現れることが多く、それらの症状を見逃さないようにするとうつ病の早期治療も可能になってきます。

一番多い身体的症状は「睡眠障害」です。寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めやすくなったりなど、睡眠の質が落ちてしまうので朝の目覚めが悪くなるなど、なかなか布団から起き上がれないという症状が現れます。

次に多いのが「食欲不振」です。食事をしても美味しく感じられなくなり、食事に消極的になります。家族が食事を用意する場合は出されたものは食べることが多いため気がつきにくいですが、ひとり暮らしである場合は自分で食事の用意をしなくなり、外食したり買ってきたりすることもなくなるので、体重が減少します。

そして、シンドローム・シフトと関係のある「痛み」が生じる人も少なくありません。頭痛を訴える人が最も多いのですが、頭痛だけとは限らずに耳や口、胃、歯、腰、肩とあらゆる場所に痛みが起こり、その痛みはあちこちと移動することがよくあります。痛みがあることで内科や整形外科を受診しても、痛みの原因がわかりません。

こういった痛みの症状を「シンドローム・シフト」と呼んでいます。

 

うつ病でシンドローム・シフトが生じる原因とは?

うつ病は心の病などといわれますから、うつ病で実際に「痛み」が生じるといっても信じがたいかもしれません。確かに、「何となく体がだるい」「やる気がおこらない」「集中できない」「今までに楽しみにしていたことが億劫になりできなくなる」などといった心の症状が前面に出ることはうつ病に多いです。

しかし実は、心の症状と痛みの生じ方とは同じメカニズムで起こると考えられているのです。

うつ病が発症するメカニズムとは完全には解明されていません。さまざまな要因が複雑に絡み合うことで発症するというのが今の考え方です。その要因のひとつに、脳が関係しているといわれています。モノアミン説といわれるもので、モノアミンとは脳内において分泌される神経伝達物質、ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミンのことをいいます。それら神経伝達物質は人の精神面に大きく作用する物質であることが解明されていて、低下することでうつ病が発症し、精神面の症状が強く現れるのです。

そして、このモノアミンは精神面に作用するだけでなく、痛みを抑える働きもあることが解明されています。すなわち、モノアミンが減少することで痛みの症状が出やすいということです。

ある人には頭痛として現れ、別の人には腰痛として現れたり、また別の人には胃痛として現れたりします。そのように痛みに特徴がないため、なかなかうつ病と結びつけて考えにくく世の中にはうつ病によって痛みが生じるという事実があまり知られていないのです。

先述したように、これらの痛みは必ずしもひとつの部位にとどまらず、あちこち移動することがあります。それがシンドローム・シフトと呼ばれる所以です。

 

シンドローム・シフトが疑わしいならすぐに受診を

以上のような理由から、ストレスや何らかの理由で脳の神経伝達物質モノアミンが低下した場合、精神面よりも痛みが前面に現れることも考えられます。

しかし、一般的に痛みが現れた際、精神科ではなく内科や整形外科を訪れる人が多いといわれています。もちろん内科的、整形外科的には問題が確認できませんから、異常なしと診断されるわけです。そうしているうちにうつ病は進行してしまいます。

うつ病に限った話ではありませんが、病気の治療においてできるだけ早期に治療を開始するに越したことはありません。

したがって、患部が移動するような痛みを感じたり、痛みの原因が他科で見つけられなかったりした場合には、シンドローム・シフトを疑ってみて、精神科を受診してみることをおすすめします。

うつ病の初期症状とは、必ずしも精神的症状が前面に出るわけではありません。身体的症状のほうが強く出たり先に出たりすることもあるので、心当たりがある場合は無理をせずにできるだけ早くに受診をするように心がけましょう。

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