信じる心が予防と治療に役立つ。信仰心とうつ病の関係

近年、多くの日本人が「うつ病」を患い、苦しんでいます。
平成23年度の厚生労働省の調査によれば、国内のうつ病患者数は約95万人(福島県・宮城県の一部を除く)。
これは、同年の精神病患者の総数320万人の内訳のなかで、最も多いものです。
うつ病は、今や国民病の一つともいえます。なぜ、日本のなかでこれほどまでにうつ病が流行しているのでしょうか。
その理由の一つとして、「多くの日本人には信仰心がないからだ」という説がささやかれています。ここでは、信仰心とうつ病の関係性についてご紹介します。

信仰心とうつ病の治療効果についての調査

信仰心とうつ病の関係について、アメリカのマサチューセッツ州にあるマクリーン病院が1年にわたる調査を実施しています。それによると、約150名の被験者に対して「信仰の篤(あつ)さ」を自己申告してもらったところ、より信仰心の篤い人ほどうつ病の治療効果が高くあらわれたそうです。その差は大きいもので2倍にもなり、信仰心がうつ病の治療に大きく影響していることがわかります。

また、信仰の対象は既存の宗教に限らなかったといいます。キリスト教やイスラム教などの既存の宗派に属していない人でも、何かしら信仰の対象がある場合には、信心深い人と同等の治療効果が表れたそうです。

日本人には信仰心がない?

2008年に国際比較調査グループが調査したところによると、日本人で宗教に何かしらの関心を持っている人は全体のおよそ4割。残り6割ほどの国民は特定の宗教を持たず、興味や関心も持っていません。多くの日本人にとって、クリスマスも正月もイベントの一つでしかなく、そこに信仰心があるかどうかは関係ないのです。

もちろん、日本にも宗教が根付いていた時代はあります。古くは神道、そして仏教などが例として挙げられます。今でも形式上は神道や仏教の宗派に属しているという人は多く、社会規範や常識など多くの部分で宗教が基礎になっているものは少なくありません。しかし、普段の生活から特別に宗教を意識して行動しているという人は少ない、というのが実情です。

信仰心がないからうつ病になる?

では、日本人の間でうつ病が流行しているのは、信仰心がないためでしょうか?

答えは、NOです。

なぜなら、うつ病は全世界で流行しており、日本人に限った病気ではないためです。日本人が生涯のうちに1度でもうつ病を患う可能性は6%~7%程度といわれており、世界平均の8%~12%よりも低い水準となっています。信仰心がないからうつ病になる、逆に信仰心があればうつ病を防げるというのであれば、こういったデータにはならないはずです。したがって、信仰心とうつ病との間に明確な関係性がある、という考えは否定されます。

信じる、というポジティブな効果はうつ病予防に効果あり

信仰心がないからうつ病になる、という考え方に科学的な根拠はありません。ですが、「信じる」というポジティブな行いがうつ病の予防や改善に効果があるということであれば、十分に考えられます。これは、先に挙げたマクリーン大学の調査結果とも符合します。

信仰を持つことは行動の指針を持つということでもあります。迷いや悩みを抱えて苦しんでいるとき、道標になるものがあればその状況から速やかに脱出することができるでしょう。ストレスを上手に受け流すことができるという意味において、信仰心を持つことがうつ病の予防や改善に役立つ可能性はあります。また、多くの宗教では日々の生活に規範を定め、人はこうあるべきだという姿を表しています。信仰している人はその対象の姿になるべく近づこうとして、規則正しい生活を送る傾向にあります。このことが、うつ病を始めとするさまざまな精神疾患を遠ざけていると考えることもできます。

まとめ

信仰心とうつ病の間に、明確な関係があるわけではありません。ですが、「信じる」というポジティブな行いは、うつ病の予防や改善に有効であると考えられます。規則正しい生活を送るという点においても、信仰心がある人ほどうつ病にかかりにくいということも、まったく理屈の通らない話ではないのかもしれません。

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