近未来のカウンセラー、ロボットセラピー

近年、ロボットの研究が急速に進んでおり、さまざまなタイプのロボットが活躍するようになりました。
小さな部品を扱う工業用ロボットや、自走して床を掃除してくれる掃除ロボット、犬のように行動するペットロボや、人間のように二足歩行し、会話して人間とコミュニケーションを取るロボットなど、目的は違えどどれも人間社会を支えるロボットであることに変わりはありません。
今回は、そんなロボットを心の癒やしに使った「ロボットセラピー」をご紹介します。

動物と同じようにロボットにも癒しの効果がある 

アロマセラピーやアニマルセラピーなど、薬を服用することなく気持ちを軽くするセラピーはいくつもあります。ロボットセラピーもその一つ。利用者の行動や言葉に反応を返す、可愛らしいデザインのロボットを使用することがほとんどです。猫やアザラシの赤ちゃんの形をしたロボットや曲線的なデザインで親しみやすさを印象づけたロボット、二足歩行でダンスを踊るロボットなど、セラピー用のロボットがいくつも開発されています。

アニマルセラピーと同じような効果を得られるということが確認されたロボットもあり、「最もセラピー効果のあるロボット」としてギネスに登録されたこともあります。このようなロボットセラピーは、主に老人ホームや児童養護施設で取り入れられています。

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大和ハウス工業株式会社HPよりセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」 
http://www.daiwahouse.co.jp/robot/paro/index.html

 

ペットロスがないというロボットの利点 

ふれあいを重視するセラピーには、犬や猫といった動物とふれあう「アニマルセラピー」があります。アニマルセラピーが確立されている中、なぜロボットを使うのでしょうか。

コンパニオン・アニマル〈セラピーのための動物〉とふれあうことで、患者に良い影響を与えることがわかっています。しかし、動物は病気や死を避けることはできません。今までコンパニオン・アニマルに愛着を持っていた患者が、死によって喪失感を味わい、ペットを飼っていた人が陥る「ペットロス」とよく似た状態になってしまう可能性があります。コンパニオン・アニマルの死による喪失感から、回復しかけていたうつ病が再び悪化してしまうということも、否定できません。

セラピーに使われるロボットは、コンパニオン・アニマルのように死んでしまうことがありません。故障したとしても、メンテナンスに出せば再び可愛い反応を返してくれるようになります。

ロボットセラピーの生理的、心理的、社会的な効果

ロボットセラピーは、アニマルセラピーとおおむね同じような効果を得られます。

生理的効果

ロボットとふれあい、ゆったりとした時間を過ごすことでリラックスでき、副交感神経の活動が優位になります。すると、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質の分泌が活発になり、精神の安定や規則正しい睡眠の手助けになってくれるのです。セロトニンは睡眠や精神の安定のほか、生体リズムや体温調節にも関わる大切な物質です。

うつ病はセロトニンの不足から起こるともいわれているので、ロボットセラピーで心身をリラックスした状態にすることはうつ病治療に役立ちます。うつ病によって自律神経のはたらきが乱れると、心臓のはたらきもバランスを崩してしまいます。すると脈拍や血圧が安定しなくなり、頻脈(脈拍が多くなること)になったり、血圧が極端な数値になってだるさや動悸の原因になるのです。しかし、ロボットセラピーで副交感神経の活動が優位になると、自律神経のバランスが少しずつ戻ってきます。セラピーを続けるうちに血圧や脈拍が安定し、倦怠感や脈拍の乱れが改善されていきます。

心理的効果

ロボットセラピーで楽しい時間を過ごすと「次もセラピーがしたい」という行動の動機を持つことができます。他のことに興味を持ち、次の活動へのモチベーションを上げることができるのです。

社会的効果

ロボットセラピーを複数人で行うことにより、同じものを共有した人同士での会話が発生します。「可愛いね」「動いたよ」という言葉を交わすことにより、社会性の回復につながります。会話が増えることにより、同じセラピーを受けている患者やスタッフとのコミュニケーションが発生し、萎縮してしまった自尊心を少しずつ取り戻していくことができるのです。ロボットセラピーを受けながら「できる、やりたい」と感じることを少しずつ増やしていくこともできます。

実際にロボットセラピーを導入した施設では、利用者にセラピーを受けさせていた介護士や看護師といったスタッフに対しても効果が表れていたそうです。自分の行動に対して期待していた結果が得られず、徒労感や欲求不満によって意欲をなくしてしまう「燃え尽き症候群」によるストレスの軽減がみられました。

まとめ

ロボットセラピーは研究が始まったばかりの分野ではありますが、アニマルセラピーとおおむね同じような効果が実証されています。それにともなってセラピー用ロボットがいくつか開発され、福祉施設で活躍しています。街中の病院にセラピーロボットがやってくる日も、そう遠くないのかもしれません。

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