うつ病ライブラリーDEPRESSION LIBRARY

うつ病の症状

精神症状・身体症状という
二つの面から、
うつ病の症状について
解説します。

思考について

うつ病患者が、ネガティブな思考を繰り返したり自殺を試みようとするのはよく知られています。
しかし、なぜうつ病患者がそういった思考を繰り返したり、自殺を試みようとするまでに追い詰められるかは未だに広く知られていません。
「うつ病だから、仕方ない」という思い込みを一度取り払い、なぜうつ病患者がそういった思考、行動に至るのかを正しく知りましょう。
自分自身や身近な方がうつ病になってしまったときの、早期発見にも役立ちます。

うつ病によって引き起こされる思考の症状

思考抑制、思考制止

「大切な会議の途中なのに頭がぼうっとして上司や同僚の話を真剣に聞くことができない」
「受験まであと少しなのに、集中力が続かなくて勉強に身が入らない」

年代に関わらず、うつ病患者に広くみられるのがこういった「思考抑制」または「思考制止」と呼ばれるものです。健康なときにはきちんと情報を処理して思考することができていたのに、うつ病になると脳の働きが鈍り、情報を処理して適切な判断を下したり、自分に関わる大きな決断をすることが次第にできなくなってしまいます。思考抑制が表れると、そこから自分一人で抜け出すことはほとんど不可能です。

思考抑制や思考制止は、自分自身だけでなく周囲からも「様子がおかしい」といわれる、わかりやすい変化です。うつ病を発症すれば、年齢を問わず表れます。身近な方にこういった変化がみられたら、うつ病の可能性を疑ってみてください。

悲観的思考、希死念慮(きしねんりょ)

うつ病患者に広くみられる思考として、悲観的思考があります。職場や学校といった、自分の所属する場所で起きた小さなミスを大きく解釈し、世界が終わってしまうかのように悲観的な思考に囚われてしまうのです。

職場で上司のあいさつに気づくのが遅れてしまった、学校で指名されたときに間違った解答をしてしまった。そうした小さなミスが心の中で大きく膨らみ、自分を責めてしまいます。「ぼうっとして上司のあいさつに気づけなかった。自分は駄目な人なんだ」「みんなの前で間違った解答をしてしまった。今まできちんと勉強をしなかったからだ」といった自責的、自罰的な思考回路にはまってしまい、ポジティブな出来事に目をつぶってしまうようになるのです。

この悲観的思考、自責的な思考が深まると、「もうこの仕事を辞めるしかない」「もう学校には行けない」という自罰的な考えに固執してしまい、周囲がいくら「そんなことないよ」と慰めても聞く耳を持たなくなってしまいます。

そして周囲の慰めを受け入れられない自分を責め、「自分は周囲に気を使わせる駄目な人間だ、もう死ぬしかない」と自殺を考えるようになってしまいます。自殺を考え、ほのめかすような言動を希死念慮といい、この希死念慮が表れるとうつ病は重度のものになってしまっています。

思考が行動に表れる影響に注目

思考は行動に影響を与えます。たとえば、思考抑制や思考制止が起こると与えられた情報に対して適切に対応できず、まったく見当違いの受け答えをしてしまうことがあります。

また、悲観的思考や希死念慮にとらわれてしまうと、何事にも興味を示さなくなったり、自殺をほのめかすようになります。

このように、思考が行動に与える影響を注意深く見守ることで、うつ病の方の思考パターンや、そのときの症状の様子、重症度をある程度把握することができます。思考は目にみえるものではないので、このように行動から推測し、対処が必要な場合は早めに手を打つことが重要です。

まとめ

思考に表れる変化は、目でみることができません。人が何を考え、どのように捉えているのかを知ることは、よほど親しい間柄でもない限り不可能です。また、生まれ持った性格や獲得した個性、直近の出来事などで、考え方や捉え方は変化します。

うつ病による思考の変化も、うつ病を患っていることが明らかになっていない状況では、ただ「不機嫌なだけ」「元気がないだけ」のように見えてしまうことがあります。

大切なことは、思考の変化が「何に由来するのか」を探ることです。嫌なことがあったときに不機嫌になったり、疲れているときに元気がなくなることは誰にでもあります。原因に心当たりがある場合は、うつ病との関連性を深く追求する必要はありません。ですが、「理由なく」「原因なく」、さらに「急激に」思考が変化しているような状況では、うつ病の発症が疑えます。