うつ病ライブラリーDEPRESSION LIBRARY

うつ病の治療

うつ病で受診をする前に、
治療について
知っておきたいことや
心構えをお伝えします。

初診時【心理検査】

明確な病変が表れにくいうつ病の診断は、医師の所見によるところが大きく、知識や経験が結果を大きく左右します。
医師によっては、同じ患者を診察した結果が正反対になることも珍しくありません。
そういった問題を解消するため、たとえばセカンドオピニオンを利用して診断結果に客観性を持たせたり、光トポグラフィー検査によってうつ病の病状を数値化する試みが行われています。
心理検査も、うつ病の診断をより正確かつ客観的に証明する手段の一つです。
心理検査を行うことで被検者の内面を読み取り、うつ病患者に特有の心理パターンと照らし合わせ、合致するところがないかを調べます。
そうすることで、被検者本人ですら自覚できていないようなうつ病の兆候を、事前に察知することができるのです。

心理検査の種類

うつ病の診断に用いられる心理検査には、さまざまな種類があります。それぞれ別方面から被検者の心理面にアプローチして、その反応から症状や重症度などをチェックします。なかには、かつては効果があると信じられていたものの近年になって信ぴょう性が疑わしくなったもの、臨床的に非常に意義があり現在でも現場で活用されているもの、うつ病の診断だけでなくほかのさまざまな精神疾患の診断にも活用されているものなどがあり、どれを採用するかによって得られる結果も異なります。

ここでは一例として、うつ病の初診時に利用されることの多い心理検査をご紹介します。

ハミルトンうつ病評価尺度

ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)とは、1960年にイギリスのマックス・ハミルトンが公開した、うつ病の病状を示す指標です。ハミルトンうつ病評価尺度では、検査前1週間を含めた症状の頻度と程度に関する質問と、各質問に対応する答えが3~5つ記述された検査紙を利用します。

頻度

  • 0.全くなし
  • 1.ときどき
  • 2.しばしば、頻繁に
  • 3.ほとんど常に

 

程度

  • 0.全くなし
  • 1.軽度(悲しい、悲観、落胆など気分的な症状)
  • 2.中度(人生のある一面に絶望する、特定のことに対して虚無感を覚えるなど)
  • 3.重度(人生のほとんどに絶望し価値を感じなくなる、さまざまなことに対して虚無感を覚えるなど)
  • 4.最重度(あらゆることに絶望し極度の悲しみに襲われる、人生を悲観し希死念慮を抱えるなど)

被検者の様子や応答の具合などを見て、検査者が項目の答えの中で当てはまるものを選びます。答えにはそれぞれ点数が振られており、最終的な点数によってうつ病の状態、重症度を把握します。項目数はHAM-Dの版型によって異なり、初版であるHAM-Dは17項目です。HAM-D17では0~7点で正常、8点以上は得点数に応じて軽症、中等症、重症、最重症に分けられます。

被検者本人ではなく検査者が記入する心理検査という点でやや特殊ですが、1960年から今日まで一貫して信頼され続けている心理検査の1つです。

ロールシャッハ・テスト

ロールシャッハ・テストは、1921年にスイスのヘルマン・ロールシャッハが考案した心理検査の方法です。2つに折った紙の片面に無作為にインクを垂らし、もう一面を重ねあわせて作った左右対称のインクの染みを被検者に見せて、「それが何に見えるのか」を問うというものです。

作成方法からも分かるとおり、インクの染みが作る形に特別な意味はありません。しかし、その時点での心理状況や過去の体験によって、被検者がインクの染みに特別な形状を見出すことがあります。たとえば「羽根を広げた蝶」に見える人もいれば、「両腕を大きく広げた悪魔」のように見える人、「変わった形の花」に見える人、それ以外の何かに見える人、またはまったく何の形状も見出だせない人など、本当にさまざまです。

検査者は、10枚からなるロールシャッハ検査紙を1枚ずつ被検者に見せ、何に見えるのか問いかけます。その答えから、被検者の内面的な情動、心理状態、知覚のパターンなどを読み取ります。ロールシャッハ・テストの解答に正解はなく、被検者はただ見えるままを答えるので、より正確に被験者の内面を知ることができるといわれています。

まとめ

うつ病の初期診断では、患者の内面、パーソナルな一面を知るために、このような心理分析が用いられています。もちろん、心理検査はあくまで多岐にわたる検査の一つであり、これだけでうつ病であるかどうかを断定することはできません。

ハミルトンうつ病評価尺度もロールシャッハ・テストも、優れた心理分析であるという評価を受けているものの、あくまでも医師が診察によって得られる所見に添えられる、一つの方面から見た情報でしかありません。心理検査から得た情報をどのように解釈し、診断に結びつけるのかも医師に委ねられています。

そのため、どのような解答になったとしても、あまり深刻に考えすぎる必要はありません。むしろ、深刻に考えすぎてしまうと、あえて自分の本心とは異なる解答をしてしまったり、検査者に対して嘘を答えてしまうなど、心理検査の意義を損ねるような行動を取ってしまいかねません。心理分析を受ける際には、その結果如何によって自分がうつ病であるかどうか決められてしまうと身構えるより、医師に己の内面をより正確に理解してもらうための少し特殊な問診といった程度に考えておきましょう。